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  • 徳永仁・高村徳人
  • 九州保険福祉大学薬学部
  • 2013.07.16

    日数調整“だけ”が目的でしょうか
    残薬確認をファーマシューティカルケアの契機に

     「残薬確認で処方日数の調整を行っても,6割以上は再度調整が必要となっている」――。薬剤師が薬局店頭や在宅で行っている「残薬確認」の意義を問うような見出しが躍った業界紙の記事を覚えている方もいるでしょう。しかし,この記事の数字には,見出しも含め誤りがありました。また,実際に行われた研究は,この記事に書かれたことを意図したものでもありませんでした。
     日本大学薬学部医療コミュニケーション学教授でこの研究を行った亀井美和子氏は,「何のために残薬確認を行っているのかが理解されていない」と指摘しています。
     誤報によりはからずも浮き彫りになった「残薬確認」の目的の無理解について,亀井氏にお話を聞きました。

    ●薬剤師が残薬をどう定義しているかやどのように確認しているかを調査

    ―― まず,この研究の目的についてお聞かせください。
    亀井美和子氏(以下,亀井) 残薬確認は薬局での業務として定着してきていますが,ひとくちに「残薬」といっても,実際にどのくらい患者宅に薬が残っていることを薬剤師は「残薬」と認識しているのか,またそれをどのくらいの頻度で,どのようにして確かめているのかといった実態を調べることが目的でした。また,この研究はお薬手帳を薬局でどのような目的に活用しているのかも調べました。つまり,お薬手帳をつけている薬局のほうが,残薬を多く見つけているのではないかという仮定もあります。

    ―― 調査結果からどのようなことがわかったのでしょうか。
    亀井 主な結果は表のとおりになります。
     何日分の薬があることを「残薬」と認識しているかは,急性疾患の薬と慢性疾患の薬で異なるのは当然かもしれませんが,1日分でも残っていたら残薬と認識している方もいました。
     また,残薬があることをどのように確認しているかは,口頭が最も多く,次いで薬歴からの確認も多くありました。お薬手帳での確認はあまり多くありませんでした。
     また,薬歴への記載内容は,残薬の有無や残薬となっている医薬品名の記載は多かったのですが,残薬となった理由の記載は6割程度にとどまっています。
     残薬を確認して処方日数を調整しても,次回確認時にまた残薬が生じているという患者は約3割という回答が得られました。


    表 残薬確認を行っていると回答した薬局薬剤師330人の集計値


    ―― この調査結果に対する印象は。
    亀井 残薬の確認を日数調整のためと思っている人も多いようですが,いくら日数調整をしても残薬が出てしまう,つまりアドヒアランスが低下している原因は薬局店頭ではなかなかわからないのではないかと思っています。
     これまで私は研究のために患者宅を訪問して服薬状況を確認しましたが,そこで得た印象と,アンケート調査の結果は「何か違うな」と感じました。本当はもっと多くの患者で薬が残っているかもしれない。
     実際に訪問してみると,一包化した包装から特定の薬だけ取り出して飲む人もいて,「こんなにも薬を飲みたくないのだな」と感じました。その背景には,薬に対する不安や不信のようなものがあるのでしょう。「体調はいいけれど,医師との関係を維持するために薬をもらっている」,「薬は飲みたくない。もらっているだけ」という人もいました。
     そういった患者の抱える根本的な問題を解決せずに,日数調整さえ行えばいいというのでは薬剤師として悲しいことです。

    ●残薬確認をファーマシューティカルケアのきっかけに

    ―― 根本的な問題とは。
    亀井 飲む薬が多すぎると感じている人が多いのではないでしょうか。それを減らしていくような働きかけを,薬剤師はもっと行ったほうがいい。あるいは,自己判断で薬を飲まずに病状が悪化することがあるかもしれない。米国では,「外来での薬物治療が原因による入院」が,入院患者の1割もいるという研究結果があります。
     「患者の薬物治療の問題を解決する」という,ファーマシューティカルケアの概念に基づいて残薬確認も行うべきです。薬剤師が適正な外来薬物治療に関与することが,残薬確認によりやりやすくなったことは確かです。残薬確認をきっかけに,処方医にさまざまな提案をしやすい環境ができました。
     繰り返し日数調整が必要なのであれば,いくら処方しても患者が飲めていないことになります。それは薬を見直す処方提案のきっかけになるのではないでしょうか。
     残薬を数えて処方日数を調整するのは,経済的には意義があると思いますが,それだけなら薬剤師でなくてもできる作業です。

    ―― 残薬確認はきっかけであると。
    亀井 ちゃんと残薬の問題に関わると,もっと得られるものがあるはずです。患者の抱える薬への不安に対する具体的な関わり,医師への提案ができればいいと思っています。しかし,薬が残る「本当の理由」を探るためには,患者との信頼関係の構築が必要になります。
     そういったスキルの研修は,座学型の研修では時代遅れでしょう。臨床に立つ実務者への研修も,「この患者だったらこうする」という薬剤師の実践的な判断力を評価できるものが必要です。

    ―― 残薬に関する研究の今後は
    亀井 今回の調査はウェブを使った薬剤師へのアンケート調査でしたが,そのほかに介入研究も予定しています。いくつかの薬局の協力を得て,糖尿病患者に対し残薬を確認し,それをお薬手帳に記入し,診察時に医師に見せるよう患者に促して,処方に反映されているかなどを確認していくというものです。

    ―― 新たな研究成果にも期待しています。ありがとうございました。(MK)


    ●今回の研究結果の解析を担当した同研究室6年の木下達也君(左)と亀井氏(右)
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